排卵日を計算する ― 日本版:妊娠しやすい日・周期・検査方法

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執筆:フィロメナ・マルクス2025年6月6日
排卵直前の卵子イメージ

卵子が受精可能なのは1周期で数時間だけ。この短いタイミングが妊娠成立の鍵です。本記事では、月経周期の流れ・排卵日を正確に知る方法・よくある誤解・最新の検査法まで日本の最新ガイドを解説します。

月経周期とホルモンの流れ

  • 月経期(1~5日目): 子宮内膜が剥がれ落ち、エストロゲン・プロゲステロンが最低値に。
  • 卵胞期(1日目~排卵まで): FSHで卵胞が成長、エストロゲン上昇で内膜再生。
  • 排卵(12~16日目が多い): LHサージで成熟卵子が放出。受精可能時間は約12~24時間。
  • 黄体期(約14日間): プロゲステロン分泌で内膜維持。妊娠しなければ再び月経へ。
FSH・LH・エストロゲン・プロゲステロンの周期変化
ホルモンと周期の流れs

妊娠しやすい日(排卵日)の計算方法

精子は最大5日間生存、卵子は約24時間のみ受精可能。
排卵日の6日前~排卵日当日が最も妊娠しやすい期間です。

  • Knaus-Ogino法: 最短周期-18日=妊娠可能期間の開始、最長周期-11日=終了。
  • 実践アドバイス: 2~3日に1回性交すれば、全期間をカバーできます。

排卵日予測・検査方法

  • カレンダーアプリ: 周期が安定していれば目安になるが、誤差も多い。
  • 基礎体温: 起床直後に毎日測定。0.2~0.5℃上昇で排卵後を示す(予測には不向き)。
  • 頸管粘液: 透明でよく伸びる粘液は排卵期のサイン。
  • LH検査薬: 排卵24~36時間前にLH上昇を検出。周期が不規則でも有効。
  • ウェアラブル端末: 体温・脈拍変動をAI解析。予測精度は約90%。

排卵検査薬の使い方

  1. 最も早い排卵予想日の5日前から開始。
  2. 朝2回目の尿を使用(濃度が安定しやすい)。
  3. 検査紙を10秒間尿に浸し、説明書通りに判定。
  4. 陽性が出た日と翌日に性交を計画。

排卵のサイン・症状

  • 透明でよく伸びる頸管粘液
  • 下腹部の軽い痛み(排卵痛)
  • 子宮頸部が高く・柔らかくなる
  • 翌日の基礎体温上昇

排卵が起こらない場合 ― 原因と対策

よくある原因はPCOS(多嚢胞性卵巣症候群)、甲状腺疾患、黄体機能不全など。
対策:

  1. 周期記録とホルモン検査(甲状腺含む)
  2. 体重管理・ストレス軽減
  3. クロミフェン・レトロゾールなど排卵誘発剤の使用
  4. 必要なら生殖医療(IUI・IVF)を検討

排卵に関するよくある誤解と事実

  • 誤解:排卵は必ず14日目に起こる。
    事実: 卵胞期の長さで変動。28日周期でも10~17日目に排卵することがあり、周期が短いとさらに早まります。

  • 誤解:排卵痛がなければ排卵していない。
    事実: 下腹部痛を感じるのは約3割。痛みがなくても排卵は起こります。

  • 誤解:毎日性交すれば妊娠率が上がる。
    事実: 2~3日に1回で十分。精子の質も安定し、妊娠しやすい期間をカバーできます。

  • 誤解:基礎体温で排卵日を予測できる。
    事実: 体温上昇は排卵後に起こるため、予測にはLH検査薬や頸管粘液観察が有効です。

  • 誤解:ストレスは妊娠に影響しない。
    事実: 慢性的なストレスはコルチゾール上昇→LHサージ遅延・排卵抑制につながります。リラックス習慣が妊娠率を高めます。

参考文献・追加情報

  1. Wilcox AJら Timing of Sexual Intercourse in Relation to Ovulation. N Engl J Med, 1995.
  2. Shilaih Mら Wearable Sensors Reveal Menses-Driven Changes in Physiology. J Med Internet Res, 2019.
  3. van der Velden Jら Innovative Approaches to Fertility Tracking, 2023.
  4. WHO Infertility – Fact Sheet, 2024.

まとめ

カレンダーアプリ・LH検査薬・基礎体温の組み合わせが最も信頼できる排卵日予測法です。自分の体のサインを記録し、周期を把握しましょう。妊娠が難しい場合は早めに婦人科で相談を。現代の生殖医療は多くの選択肢を提供しています。

よくある質問(FAQ)

排卵検査薬(LH検査)を予想日の3~5日前から使い、基礎体温も毎日記録すると、LH上昇と体温変化の両方で排卵日が分かります。

はい。排卵検査薬と頸管粘液観察が有効です。複数周期を記録し、最も早い排卵予想日の5日前から毎日検査しましょう。

最短周期-18日で妊娠可能期間開始、最長周期-11日で終了。安定した周期の場合のみ有効で、LH検査や頸管粘液観察と併用推奨です。

最も早い排卵予想日の5日前から毎日使い、陽性が出るまで続けます。例:28日周期なら9日目から開始。

LH(黄体形成ホルモン)の尿中上昇を検出。陽性なら24~36時間以内に排卵が起こる可能性が高いです。

排卵後に体温が上昇するため、予測には不向き。LH検査や頸管粘液観察と組み合わせると精度が上がります。

指で膣内の粘液を確認し、透明でよく伸びる(生卵白状)なら排卵期のサインです。

排卵日の6日前~排卵日当日が最も妊娠しやすいです。精子は最大5日、卵子は約24時間生存します。

はい。28日周期でも10~17日目に排卵することがあり、周期が短い場合はさらに早まります。

LH上昇や体温変化がない、頸管粘液がずっと少量・粘度が低い場合は排卵障害の可能性。婦人科でホルモン検査を受けましょう。

慢性的なストレスはコルチゾール上昇→LHサージ遅延・排卵抑制につながります。リラックス習慣が妊娠率を高めます。

ビタミンD・B群・亜鉛・セレン・オメガ3を十分に摂るとホルモンバランスが整い、卵子の質も向上します。野菜・果物の抗酸化物質も有効です。

肥満はインスリン・エストロゲン値を上げ、LHサージを弱めて排卵障害の原因になります。適度な減量で周期・卵子の質が改善します。

多くは中止後最初の周期で排卵が再開します。約80%は6週間以内に排卵しますが、PCOSなどホルモン異常がある場合は遅れることも。

周期・症状・体温・LH検査結果を記録することで、アプリの予測精度が上がります。複数の方法を組み合わせるのが効果的です。

早いLH陽性・早期の頸管粘液・体温上昇があれば、周期が短い可能性。生理直後からサインを観察しましょう。

毎朝起床直後に測定。0.2~0.5℃の上昇が排卵後のサインです。

クロミフェン・レトロゾールなどが排卵誘発剤として使われます。周期異常がある場合は医師に相談しましょう。

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)でも、減量・生活習慣改善・薬物治療(メトホルミン・クロミフェン等)で排卵周期が整うことがあります。

35歳未満なら1年、35歳以上なら半年妊娠しない場合は婦人科・不妊治療専門医に相談しましょう。既往症(子宮内膜症・甲状腺疾患等)がある場合は早めの受診が推奨されます。