妊娠中のリネア・ニグラ ― 原因・ケア・よくある疑問(日本版)

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執筆:フィロメナ・マルクス2025年6月16日
妊娠中のお腹に現れるリネア・ニグラ

妊娠中、体にはさまざまな変化が現れます。リネア・ニグラ(Linea Nigra)は、下腹部からおへそ、時に胸骨まで伸びる茶色い縦線。これは正常な現象で、特別なケアや治療は不要です。本記事では、リネア・ニグラの原因・頻度・ケア方法・よくある疑問を日本の最新ガイドで解説します。

リネア・ニグラとは?

リネア・ニグラ(「黒い線」)は、もともと白っぽいリネア・アルバ(腹部中央の結合組織線)が、妊娠中のホルモン変化でメラニン色素が増え、茶色~黒色に変化したものです。色や太さは個人差があり、医学的な問題はありません。

どれくらいの人に現れる?

日本を含む世界で妊婦の約70~90%に現れます (Estève 1994, Cohen 2023)。 肌がもともと濃い人ほど目立ちやすく、1度現れた人は次回妊娠でも出やすい傾向です。

いつ現れて、いつ消える?

妊娠15~22週ごろから目立ち始め、妊娠後期に濃くなることも。
出産後はホルモン値が下がり、通常6~12週間で自然に薄くなります。まれに1年ほど残る場合もありますが、健康上の問題はありません。

なぜできる?

  • ホルモン変化: エストロゲン・プロゲステロン・α-MSHがメラニン生成を促進
  • 肌質・遺伝: 色素沈着しやすい体質・家族歴があると濃くなりやすい
  • 紫外線: 日焼けでさらに濃くなるため、UV対策が有効
  • 葉酸不足: 葉酸が十分だと色素沈着が軽減する可能性あり。妊娠中は必須栄養素

妊娠以外でも現れる?

まれにホルモン異常・急激な体重増加・特定の薬剤で現れることがあります。新生児の約45%にも一時的に見られ、半年以内に自然消退します。

ケア・予防のポイント

  • 紫外線対策:
    • 毎日SPF30以上の日焼け止めを使用
    • ミネラル系(亜鉛・酸化チタン)は妊娠中も安全
    • 薄い服でもUVは通るため、こまめに塗り直し
  • 葉酸・栄養:
    • 葉酸400µg/日を食事+サプリで摂取
    • 葉物野菜・豆類・全粒穀物・抗酸化食品(ベリー・ナッツ・パプリカ)を積極的に
  • やさしいスキンケア:
    • ビタミンC・E配合の美容液で抗酸化ケア
    • アロエ・パンテノール・シアバターで保湿
    • レチノイド・強いピーリング剤は妊娠中避ける
  • 産後ケア:
    • 週1回の酵素・シュガースクラブで自然なターンオーバー促進
    • アーモンド・ホホバ・マルラオイルで保湿
    • しつこい色素沈着は授乳終了後に皮膚科で相談(ピーリング・レーザー等)
妊婦向けの自然派スキンケア
やさしいケアとUV対策が色素沈着を予防します。s

産後の治療は?

1年以上残る場合や気になる場合は、皮膚科でレーザー・光治療・中程度のピーリング・ハイドロキノン外用などが選択肢です。授乳中は美白成分の使用を控えましょう。

よくある誤解

  • 線の長さや位置で性別が分かる?
    科学的根拠はありません。男女どちらでも現れます。
  • 早く現れると双子?
    関係ありません。ホルモンや肌質による個人差です。
  • 色白だとできない?
    色白でも現れますが、目立ちにくいだけです。
  • クリームで完全に防げる?
    予防はできませんが、UV対策と保湿で濃くなるのを抑えられます。

医師に相談すべきケース

通常は心配不要ですが、急に色や形が変化した、強いかゆみ・痛み・しこりがある、産後1年以上消えず気になる場合は皮膚科で相談しましょう。

まとめ

リネア・ニグラは妊娠中の自然な現象です。UV対策・やさしいケア・葉酸摂取で濃くなるのを予防し、ほとんどは産後自然に消えます。気になる場合は皮膚科で相談できますが、健康上の問題はありません。

よくある質問(FAQ)

妊娠中のホルモン変化でメラニン色素が増え、腹部中央に現れる茶色い縦線です。

いいえ。健康への影響はなく、ほとんどは自然に消えます。

妊娠15~22週ごろから現れ、出産後6~12週間で自然に薄くなります。まれに1年ほど残ることも。

妊娠中のエストロゲン・プロゲステロン・α-MSHがメラニン生成を促進するためです。

日焼け止め・葉酸摂取・やさしいスキンケアで濃くなるのを抑えられます。

ウォータープルーフのコンシーラーやパウダーで一時的にカバーできます。

はい。約10~30%の妊婦には目立つ線が現れません。体質やホルモン反応によります。

無香料・保湿クリームやオイルでケア。症状が続く場合は皮膚科で相談しましょう。

急な色・形の変化、強いかゆみ・痛み・しこり、産後1年以上消えない場合は皮膚科受診を。

性別や双子との関連、色白だとできない、クリームで完全に防げる等は科学的根拠がありません。

妊娠線は皮膚の断裂、リネア・ニグラは色素沈着による縦線です。

新生児の約45%、まれに男性(ホルモン異常等)にも現れることがあります。