妊娠中、体にはさまざまな変化が現れます。リネア・ニグラ(Linea Nigra)は、下腹部からおへそ、時に胸骨まで伸びる茶色い縦線。これは正常な現象で、特別なケアや治療は不要です。本記事では、リネア・ニグラの原因・頻度・ケア方法・よくある疑問を日本の最新ガイドで解説します。
リネア・ニグラとは?
リネア・ニグラ(「黒い線」)は、もともと白っぽいリネア・アルバ(腹部中央の結合組織線)が、妊娠中のホルモン変化でメラニン色素が増え、茶色~黒色に変化したものです。色や太さは個人差があり、医学的な問題はありません。
どれくらいの人に現れる?
日本を含む世界で妊婦の約70~90%に現れます (Estève 1994, Cohen 2023)。 肌がもともと濃い人ほど目立ちやすく、1度現れた人は次回妊娠でも出やすい傾向です。
いつ現れて、いつ消える?
妊娠15~22週ごろから目立ち始め、妊娠後期に濃くなることも。
出産後はホルモン値が下がり、通常6~12週間で自然に薄くなります。まれに1年ほど残る場合もありますが、健康上の問題はありません。
なぜできる?
- ホルモン変化: エストロゲン・プロゲステロン・α-MSHがメラニン生成を促進
- 肌質・遺伝: 色素沈着しやすい体質・家族歴があると濃くなりやすい
- 紫外線: 日焼けでさらに濃くなるため、UV対策が有効
- 葉酸不足: 葉酸が十分だと色素沈着が軽減する可能性あり。妊娠中は必須栄養素
妊娠以外でも現れる?
まれにホルモン異常・急激な体重増加・特定の薬剤で現れることがあります。新生児の約45%にも一時的に見られ、半年以内に自然消退します。
ケア・予防のポイント
- 紫外線対策:
- 毎日SPF30以上の日焼け止めを使用
- ミネラル系(亜鉛・酸化チタン)は妊娠中も安全
- 薄い服でもUVは通るため、こまめに塗り直し
- 葉酸・栄養:
- 葉酸400µg/日を食事+サプリで摂取
- 葉物野菜・豆類・全粒穀物・抗酸化食品(ベリー・ナッツ・パプリカ)を積極的に
- やさしいスキンケア:
- ビタミンC・E配合の美容液で抗酸化ケア
- アロエ・パンテノール・シアバターで保湿
- レチノイド・強いピーリング剤は妊娠中避ける
- 産後ケア:
- 週1回の酵素・シュガースクラブで自然なターンオーバー促進
- アーモンド・ホホバ・マルラオイルで保湿
- しつこい色素沈着は授乳終了後に皮膚科で相談(ピーリング・レーザー等)

産後の治療は?
1年以上残る場合や気になる場合は、皮膚科でレーザー・光治療・中程度のピーリング・ハイドロキノン外用などが選択肢です。授乳中は美白成分の使用を控えましょう。
よくある誤解
- 線の長さや位置で性別が分かる?
科学的根拠はありません。男女どちらでも現れます。 - 早く現れると双子?
関係ありません。ホルモンや肌質による個人差です。 - 色白だとできない?
色白でも現れますが、目立ちにくいだけです。 - クリームで完全に防げる?
予防はできませんが、UV対策と保湿で濃くなるのを抑えられます。
医師に相談すべきケース
通常は心配不要ですが、急に色や形が変化した、強いかゆみ・痛み・しこりがある、産後1年以上消えず気になる場合は皮膚科で相談しましょう。
まとめ
リネア・ニグラは妊娠中の自然な現象です。UV対策・やさしいケア・葉酸摂取で濃くなるのを予防し、ほとんどは産後自然に消えます。気になる場合は皮膚科で相談できますが、健康上の問題はありません。