人工授精(IUI)は、負担が少なく費用も抑えられる生殖補助医療です。本記事では、日本の最新ガイドに基づき、流れ・適応・費用・成功率・他法との比較・リスクまでわかりやすく解説します。
IUIとは?
IUIは、洗浄・濃縮した精子を細いカテーテルで直接子宮内に注入する方法です。頸管粘液の障害を回避し、卵子に精子が届きやすくなります。パートナー精子・提供精子どちらでも可能です。
IUIの主な適応
- 軽度の精子障害(濃度・運動率低下)
- 女性の排卵障害・不規則な周期
- 頸管因子不妊(粘液異常・抗精子抗体)
- 原因不明不妊(タイミング法不成功)
- 未婚・同性カップルの精子提供
- 免疫性不妊(抗精子抗体)
IUIの必要条件
- 少なくとも片側卵管が通っている(HSG/HyCoSyで確認)
- 自然またはホルモン誘発による排卵
- 洗浄後運動精子数500万以上
- 生殖器感染症がないこと
- 提供精子は遺伝・感染症スクリーニング済み
IUIの流れ(ステップ)
- 事前検査・相談: 周期・精液・血液・超音波検査
- 卵巣刺激: クロミッドや低用量ゴナドトロピンで1~3個の卵胞を育てる
- 排卵誘発: hCG注射で排卵タイミングを調整
- 精子調整: 新鮮または凍結精子を洗浄・濃縮
- 人工授精: hCG後24~36時間でカテーテル注入(5分程度、痛みはほぼなし)
- 黄体補充: プロゲステロン膣剤で内膜を安定
- 妊娠判定: 14日後に血液hCG検査
IUIのメリット
- 精子を直接子宮に届けるため障害を回避
- 低侵襲・麻酔不要・通院回数が少ない
- IVF/ICSIより費用が安い
- 治療期間が短い
主要な受精方法の比較
成功率(2024年データ)
- ~34歳: 12~18%/周期
- 35~40歳: 8~12%
- 40歳以上: 5%未満
3~6周期で累積妊娠率は30~45%。その後はIVFへの切り替えが推奨されます。
成功率アップのコツ
- 適正体重・禁煙・節酒
- ヨガ・瞑想・適度な運動でストレス管理
- 精子提出前2~3日禁欲
- 超音波・LH検査で最適タイミングを把握
- 刺激周期中は妊娠しやすい潤滑剤を使用
リスク・安全性
- 薬剤リスク: OHSS(卵巣過剰刺激症候群)は低用量刺激でほぼ回避
- 多胎妊娠: 5~10%(刺激周期)、自然周期は2%未満
- 手技リスク: 軽い腹痛・少量出血・感染(まれ)
- 精神的負担: 陰性判定が続くとストレス増。カウンセリング推奨
費用・保険適用
日本のIUI1周期の費用は約2~6万円(薬剤・検査・人工授精含む)。自治体助成や保険適用は施設・自治体ごとに異なります。精子提供は追加費用あり。
IVFへの切り替え目安
- ~34歳: 3~4周期で妊娠しない場合はIVF検討
- 35~40歳: 3周期で妊娠しない場合はIVFへ
- 40歳以上・精子障害: 早期にIVF/ICSIへ切り替え
担当医と相談し、最適なタイミングで治療法を選択しましょう。
科学的根拠・ガイドライン
まとめ
人工授精(IUI)は、カップル・未婚・同性カップルにとって現実的な選択肢です。適切な周期管理・刺激・専門家のサポートで、IVFやICSIに進む前の重要なステップとなります。