男性不妊症は、パートナーに明確な原因がないにもかかわらず妊娠が成立しない、または精液検査で異常値が繰り返し認められる状態です。日本でも不妊カップルの約40%は男性側に原因があります。早期の診断と治療が重要です。
一次性・二次性不妊症
一次性不妊症:これまで一度も妊娠に至ったことがない場合。
二次性不妊症:過去に妊娠歴があるが、その後妊娠できない場合。
主な原因
日本の男性不妊症の主な原因は以下の通りです。
1. 精索静脈瘤(バリコセール)
陰嚢内の静脈が拡張し、熱がこもることで精子形成が障害されます。
- 診断: 超音波検査・触診。
- 治療: マイクロサージャリーによる結紮術や塞栓術。
2. ホルモン異常
テストステロン不足やLH・FSHの異常は精子形成を阻害します。
- 診断: 血液検査(テストステロン、LH、FSH、TSH)。
- 治療: ホルモン補充療法や薬剤調整。
3. 遺伝的要因
染色体異常(クラインフェルター症候群など)やY染色体微小欠失が精子数・質を低下させます。
- 診断: 染色体検査・PCR検査。
- 遺伝カウンセリング: 家族計画時に推奨。
4. 感染症
クラミジア、淋菌、ムンプスなどが精路や精巣に炎症を起こします。
- 診断: 尿検査・抗体検査・培養。
- 治療: 抗生物質や抗ウイルス薬。
5. 射精・勃起障害
逆行性射精や勃起不全は射精そのものを妨げます。
- 診断: 泌尿器科・性機能検査。
- 治療: PDE5阻害薬、注射療法、心理的サポート。
6. 代謝疾患
糖尿病、肥満、慢性肝・腎疾患はホルモンバランスや精子形成に悪影響を及ぼします。
- 診断: 血糖・脂質・BMI測定。
- 治療: 生活習慣改善・基礎疾患の管理。
7. 肥満・栄養
体脂肪率が高いとエストロゲンが増加し、テストステロンが低下します。抗酸化物質豊富な食事が精子の質を高めます。
- 抗酸化物質:ベリー類、ナッツ、葉野菜(ビタミンC・E、亜鉛、セレン)。
- バランスの良い食事:高品質タンパク質・全粒穀物。
8. 環境・職場要因
化学物質、溶剤、重金属、長時間の高温曝露は精巣に悪影響を与えます。
- 実験室や農薬使用時は保護具着用。
- 精液検査前は熱い風呂やサウナを避ける。
9. 精子DNA損傷
酸化ストレスはDNA断片化を引き起こし、受精率を低下させます。
- 診断: DNA断片化検査。
- 治療: 抗酸化サプリメント(ビタミンC/E、亜鉛、セレン)、ストレス管理。
10. 先天性異常
停留精巣や先天的な精路異常は妊娠率を低下させます。
- 診断: 問診・身体検査。
- 治療: 外科的矯正や生殖補助技術。
生活習慣のポイント
医学的治療に加え、日常生活の改善が妊娠率向上に直結します。
- 運動: 週150分の有酸素運動で血流・ホルモンバランス改善。
- 食事: 果物・野菜・ナッツ・全粒穀物で微量栄養素を補給。
- 体重管理: BMI20~25が理想。炎症を抑え、テストステロンを最適化。
- 睡眠・ストレス: 7~8時間の睡眠と瞑想などでコルチゾールを低減し、精子形成を促進。
診断の流れ
- WHO基準に基づく精液検査
- ホルモンプロファイル(テストステロン、LH、FSH、TSH、プロラクチン)
- 泌尿器科超音波検査
- 感染症スクリーニング(クラミジア、淋菌、ムンプス)
- 異常時は遺伝子検査
- 精索静脈瘤の評価
治療と生殖補助技術
外科的治療、ホルモン療法、ICSIやIVFなどの生殖補助技術が選択肢です。ICSIは精子数が少ない場合に有効で、1個の精子を直接卵子に注入します。 (2018年研究)
実践チェックリスト
- 精液検査・診断結果の準備
- ホルモン・超音波検査結果の持参
- 泌尿器科・男性不妊外来の予約
- 健康保険・助成制度の確認
まとめ
男性不妊症は多様な原因がありますが、ほとんどは治療可能です。早期診断と個別治療、健康的な生活習慣で妊娠率を高めましょう。専門医のサポートと最新技術を活用し、家族の夢を実現してください。