日本では宗教的な理由で生殖医療(体外受精・人工授精・精子提供・代理母出産)が制限されることは少ないですが、キリスト教・仏教・神道・イスラム教などの立場によって倫理観や推奨事項が異なります。本記事では日本の主要宗教が2025年時点で生殖医療をどう捉えているか、実際の医療現場での対応も含めて解説します。
キリスト教(カトリック・プロテスタント)
日本のカトリック教会は体外受精(IVF)・代理母出産・精子/卵子提供を原則禁止しています。人工授精(IUI)は夫婦間のみ容認。プロテスタントは教派によって柔軟で、夫婦間のIVF/IUIは容認する場合もありますが、第三者提供や代理母は慎重です。
- カトリック:IVF・代理母・第三者提供は不可
- プロテスタント:夫婦間のIVF/IUIは容認、第三者提供は教会ごとに判断
仏教
仏教は「生命尊重(不殺生)」が基本ですが、生殖医療自体は否定しません。胚の廃棄や着床前診断(PGT)には慎重な意見もありますが、妊娠・家族形成のための医療は容認されています。寺院によっては供養や祈祷を行うこともあります。
- IVF・IUI・精子/卵子提供・代理母出産は容認
- 胚の廃棄・性別選択は慎重
神道
神道は技術自体に否定的な教義はなく、家族・生命・清浄を重視します。生殖医療は容認されますが、治療前後に神社での祈祷や清めの儀式を行う人もいます。
- IVF・IUI・精子/卵子提供・代理母出産は容認
- 清浄儀式・祈祷を重視
イスラム教
日本のイスラム教徒は夫婦間のIVF・IUIは容認しますが、第三者(精子・卵子提供・代理母)は原則禁止です。婚姻関係の維持と血統の純粋性が重視されます。
- 夫婦間のIVF・IUIは容認
- 第三者提供・代理母は不可
ユダヤ教・その他宗教
日本のユダヤ教コミュニティは、生命維持・家族形成を重視し、IVF・IUIは容認。第三者提供はラビの判断による。ヒンドゥー教・シク教・バハイ教などは日本では少数ですが、家族形成のための生殖医療を容認する傾向があります。
医療現場での宗教的配慮
- 治療前に宗教的な相談・祈祷を希望する場合は医療機関で対応可能
- 胚の廃棄・着床前診断・第三者提供は事前に宗教的立場を確認
- 宗教的理由で治療を断るケースは日本では稀
まとめ
日本では宗教的理由による生殖医療の制限は少なく、ほとんどの宗教が家族形成のための治療を容認しています。ただし、カトリックやイスラム教では第三者提供・代理母出産は慎重です。治療前に医療機関・宗教施設で相談することが安心です。