着床前遺伝学的検査 2025年 ― 日本における流れ・費用・法律

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ザッペルフィリップ・マルクス
体外受精ラボでトロフェクトダーム生検中の胚盤胞を顕微鏡で観察している様子

着床前遺伝学的検査(PGT/着床前診断)は、体外受精や顕微授精で得られた胚を子宮に戻す前に遺伝学的に調べることで、重い遺伝性疾患の伝わるリスクや一部の流産の原因を減らすことを目指す方法です。妊娠が成立する前に検査を行うため、妊娠中に診断を受けて中絶するかどうかで悩む状況を回避できる場合もあります。このガイドでは、日本でPGTを受ける際の流れ、どのような方に適応があるか、現実的な費用感、そして日本の指針や法的な枠組みについて、できるだけわかりやすく整理します。

着床前遺伝学的検査とは?

PGTは、体外受精(IVF)または顕微授精(ICSI)の一環として、胚盤胞まで育てた胚からごく少数の細胞を採取し、遺伝学的な異常がないかを調べる検査です。日本では「着床前遺伝学的検査」「着床前診断」「PGD(Preimplantation Genetic Diagnosis)」などの用語が使われてきましたが、国際的には現在Preimplantation Genetic Testing(PGT)という総称が主流です。たとえばESHREなどの学会が詳細なガイドラインを公表しています。

大切なのは、PGTが妊娠中の検査や一般的な妊婦健診を「代わりに行う」ものではないという点です。PGTによって一部の遺伝性疾患や流産のリスクは下げられても、「完全に健康な子ども」を保証したり、妊娠や出産のすべてのトラブルを防げるわけではありません。

PGT・PGD用語ミニ辞典

  • PGT/PGD – 胚移植前に胚の遺伝学的検査を行う総称。日本では「着床前診断」という言葉も使われてきました。
  • PGT-M – 既に家系内で判明している単一遺伝子疾患(例:嚢胞性線維症、筋ジストロフィー、一部の神経変性疾患など)を対象とする検査。
  • PGT-A – 染色体の本数の異常(数的異常・異数性)を調べる検査。トリソミー21(ダウン症)などが代表例です。
  • PGT-SR – バランス型転座など構造異常を持つ親からの不均衡転座などを検出するための検査。
  • niPGT-A – 胚から細胞を採取せず、培養液中に放出されたDNAを解析する非侵襲的PGT-A。まだ研究段階の位置付けが強い方法です。

どんなカップルにPGTが検討される?

PGTは、誰にでも勧められる「オプション検査」ではなく、日本では主に次のような条件を満たすカップルが対象になります。

  • 家系に重篤な単一遺伝子疾患があり、原因となる変異が特定されている場合。
  • いずれかの親に染色体構造異常(バランス型転座など)があり、それが流産や先天異常のリスクとなっている場合。
  • 同じ遺伝性疾患で妊娠中絶を繰り返している、あるいは流産や死産が遺伝学的原因と考えられる場合。
  • まれなケースとして、HLA型が適合するきょうだいからの造血幹細胞移植など、既に病気を持つ子どもの治療を目的とした「きょうだいドナー」妊娠が検討される場合(非常に厳しい条件と倫理的審査が必要)。

日本では、日本産科婦人科学会(JSOG)の見解や厚生労働省の通知などに基づき、適応は比較的限定され、倫理委員会での審査・承認が求められることが多いのが特徴です。

PGT付き治療サイクルの流れ

  1. 遺伝カウンセリングと適応評価 – 臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーと、体外受精を担当する生殖医療専門医が一緒に家族歴・既往歴・検査結果を確認し、PGTが医学的・倫理的に妥当かどうかを判断します。
  2. ホルモン刺激 – 約8〜12日間、卵巣を刺激する自己注射などを行い、複数の卵胞を同時に育てます。超音波検査と血液検査で反応を見ながら用量を調整します。
  3. 採卵と受精 – 採卵は通常、静脈麻酔下で経膣的に行われます。その後、採取された卵子をパートナーあるいは提供精子と体外で受精させ(IVF/ICSI)、できた受精卵をインキュベーター内で培養します。
  4. 胚培養と生検 – 5〜6日目に胚盤胞まで発育した胚から、将来胎盤になる外側の細胞(トロフェクトダーム)を数個だけ採取します。胎児本体になる内細胞塊には触れません。niPGT‑Aを行う場合は、生検の代わりに培養液を採取して解析します。
  5. 遺伝学的解析 – 採取した細胞やDNAは、PGTに対応する専門ラボに送られ、しばしば次世代シーケンサーを用いた解析が行われます。結果は検査内容にもよりますが、数日〜1〜2週間前後で判明します。
  6. 胚移植または凍結保存 – 遺伝学的に条件を満たし、かつ形態学的評価でも良好と判断された胚が、1個ずつ子宮に戻されます。多くの場合、生検後はいったん全て凍結し、結果が出てから別周期で凍結融解胚移植を行います。

日本における費用の目安(2025年)

PGTを伴う治療サイクルは、通常の体外受精よりもかなり高額になります。検査の種類、胚の数、施設の規模や地域などによって差がありますが、おおよその目安は次の通りです。

項目おおよその費用帯(税別・2025年)主な内容
遺伝カウンセリング・検査設計約 5万〜20万円遺伝カウンセリング、家系調査、検査パネル設計、必要に応じた家族検査など。
PGT‑M/PGT‑A/PGT‑SR約 30万〜70万円胚の生検、遺伝学的解析(数個〜十数個の胚)、解析レポート。
IVF/ICSI治療サイクル約 40万〜80万円刺激周期のモニタリング、採卵、受精、胚培養、1回分の移植手技など。
刺激・黄体期の薬剤約 10万〜30万円注射薬・内服薬などの薬剤費(使用量・保険適用状況により変動)。
胚の凍結・保管初期 5万〜15万円 + 保管料 年間数万円凍結(ガラス化)手技と、液体窒素タンクでの保管料。
オプション(タイムラプス・niPGT‑A 等)数万〜20万円程度施設の設備やプランにより追加料金が発生することがあります。

2022年から不妊治療の一部が公的医療保険の適用対象となりましたが、PGTに関しては原則として保険適用外で、自費診療となるケースが多いのが現状です(条件付きの研究的枠組みなど、個別の例外はあり得ます)。自治体独自の助成制度や高額療養費制度などで負担が軽減される可能性もあるため、事前にクリニックと自治体・健康保険組合の両方に確認し、書面で費用見積りをもらうことがおすすめです。

妊娠率とリスク

PGT付き治療の成功率は、年齢、卵巣予備能、精子の状態、不妊原因、そして実際に得られる「条件を満たした胚」の数によって大きく変わります。国際的なデータでは、現代のIVF/ICSIで得られる1回あたりの胚移植での出生率は平均20〜25%前後とされ、35歳未満ではそれより高く、40歳以降では低くなる傾向があります。

年齢出生率(胚移植1回あたり)PGTを併用した場合の目安
〜34歳約 30〜40%複数の正常胚が得られることも多く、累積妊娠率は比較的良好。
35〜39歳約 20〜30%PGT‑Aにより流産リスクの一部低減や不要な移植の削減が期待される。
40歳以上< 20%正常胚が得られる割合が大きく低下。PGTは現実的な見通しを得る助けになるが、年齢の影響そのものを打ち消すことはできない。

医学的・心理的なリスク

  • 胚生検とモザイク – 経験豊富な施設で行われるトロフェクトダーム生検は概ね安全とされていますが、モザイク胚(正常細胞と異常細胞が混在する胚)では結果の解釈が難しく、誤って「異常」と判断される、または逆に見落とされるリスクもゼロではありません。境界的な結果はチームで慎重に検討されます。
  • ホルモン治療の副作用 – 刺激周期では、腹部の張り、体重増加、気分変動などが出ることがあります。重度の卵巣過剰刺激症候群(OHSS)は近年少なくなりましたが、完全には回避できません。
  • niPGT‑Aはまだ研究段階 – 非侵襲的な検査は理論的には胚への負担が少ない一方で、現時点では感度・特異度とも十分とは言えず、有望な補助ツールという位置づけです。
  • 精神的負担 – 妊娠を望む気持ち、倫理的な葛藤、検査結果を待つ時間的プレッシャーなどは、メンタルヘルスに大きな影響を与えることがあります。心理士やカウンセラーとの面談、患者会やオンラインコミュニティの活用も大きな支えになります。

海外との比較 2025

日本のカップルの中には、治療費、待ち時間、年齢制限、ドナー卵・精子の利用可否などを理由に、海外でのPGT・不妊治療を検討する方もいます。ここでは簡単な比較ポイントを挙げます。

日本

  • PGTの適応は比較的限定的で、重い遺伝性疾患や明確な染色体異常を中心に検討されます。
  • 倫理面の議論が多く、学会指針や委員会審査を重視する文化があります。
  • 費用は高額ですが、治療全体の品質や安全性は世界的にも高い水準にあります。

韓国・台湾などアジア近隣国

  • PGT‑Aがより広く提供されている国もあり、年齢適応や回数制限が日本より緩い場合があります。
  • パッケージ料金が比較的明瞭な施設も多く、日本からの渡航例も見られます。
  • 言語・文化の違い、法制度の違い、帰国後のフォローアップなどをよく確認する必要があります。

欧州(例:スペイン、チェコ)

  • PGT‑AおよびPGT‑Mが広く行われており、卵子提供や精子提供プログラムも充実しています。
  • 費用は国・施設により大きく異なりますが、日本と同程度かやや低いケースもあります。
  • 長距離移動や滞在費、現地言語での説明など、負担面も勘案する必要があります。

イギリス・フランス・ドイツ

  • 公的保険が一部のPGT/DPIをカバーする国もありますが、適応は重い遺伝性疾患にかなり限定されています。
  • 法的枠組みは厳格で、倫理的審査も重視されます。
  • 日本と同様に「技術はあるが、適応は慎重に絞る」というスタンスのことが多いです。

アメリカ合衆国

  • PGT‑AやPGT‑Mが非常に一般的で、適応も広く設定されることが多い一方、州ごとの規制差も大きいです。
  • 1サイクルあたりの総費用は日本以上に高額となることが多く、保険適用の有無に大きく左右されます。
  • 英語でのコミュニケーション、法律・保険制度の違いがハードルになる場合もあります。

日本の法制度と指針

日本では、PGTそのものを直接規定した単独の法律はありませんが、いくつかの法令と学会ガイドラインが枠組みを形作っています。主なものとしては、優生保護法に代わる母体保護法、生殖補助医療に関する厚生労働省の通知・報告制度、日本産科婦人科学会などのガイドラインがあります。

  • 重篤な遺伝性疾患や明らかな染色体異常の予防など、医学的に正当な理由がある場合に限ってPGTが検討されます。
  • 性別を目的とした選別など、医療的必要性のない「性選択」は、倫理指針上厳しく禁じられています。
  • PGTを実施する施設は、適切な設備と体制を備え、倫理委員会による審査・承認を受け、学会の指針や報告義務を守る必要があります。
  • カップルは、PGTのメリット・限界・リスクと、妊娠中の診断、ドナー卵子・精子、養子縁組などの代替案について十分に説明を受けた上で、書面によるインフォームド・コンセントを行うことが求められます。
  • 胚の作成数、凍結保存、保存期間満了後の扱い(廃棄、研究利用など)は、法律・指針と同意書に基づき、慎重に取り扱われます。

制度や指針は見直しが続いており、最新情報は厚生労働省、日本産科婦人科学会や各施設の公式サイトなどで確認するのが安全です。

日本のカップルへの実践的アドバイス

  1. まずは信頼できる情報源から – 厚生労働省、学会、大学病院などの公式情報を確認し、ネットの体験談やSNSは補足的に活用する程度にとどめましょう。
  2. 費用の見積もりを細かく確認 – IVF、PGT、薬剤、麻酔、凍結・保管などの費用を、項目別に記載した書面で提示してもらいましょう。
  3. 保険と助成制度を早めにチェック – 公的医療保険で何がカバーされるか、自治体の不妊治療助成、会社の福利厚生や民間保険の補償範囲を事前に確認しておきましょう。
  4. 1回でうまくいかない可能性も視野に – 特に高齢妊娠や複雑な遺伝性疾患では、複数回の採卵・PGTが必要になることも珍しくありません。時間的・精神的・経済的な余裕をあらかじめイメージしておくと、後悔や疲れが少し軽くなります。
  5. メンタルケアと周囲の理解を大切に – 夫婦だけで抱え込まず、必要であればカウンセラー、心理士、患者会などの支援を活用し、「頑張りすぎない」ことも意識してみてください。

PGT以外の選択肢と倫理的な視点

PGTは、多くの時間と費用、気力を必要とする選択肢であり、すべてのカップルにとって最適とは限りません。他の選択肢としては、自然妊娠や通常のIVFの後に絨毛検査や羊水検査などの出生前診断を行う方法、ドナー精子・卵子を利用して特定の遺伝子変異の伝達リスクを減らす方法、養子縁組や里親制度を通じて子どもと出会う方法、あるいはあえて遺伝学的検査を行わないという選択などがあります。

倫理的には、「より健康な子どもを望む権利」と「障害や病気のある人の尊厳をどう守るか」、そして「胚の選別をどこまで認めるのか」といったテーマが常に背景にあります。価値観や宗教観、家族構成は人それぞれです。専門家による遺伝カウンセリングと心理的支援を受けながら、パートナーとじっくり話し合って「自分たちにとって納得できるライン」を探すことが大切です。

まとめ

着床前遺伝学的検査は、高い遺伝的リスクを抱える日本のカップルにとって、重い遺伝性疾患や一部の流産を減らす有力な選択肢になり得ます。一方で、技術的には成熟していても、法律や指針による厳しい制限、経済的負担、精神的なプレッシャーといったハードルも存在します。信頼できる情報と専門家の助言をもとに、複数の選択肢を比較しながら自分たちらしい答えを見つけることが、PGTを利用するかどうかを決める上で何より重要です。

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よくある質問(FAQ)

PGTとは、IVFやICSIでできた胚を子宮に戻す前に遺伝学的に調べる検査のことです。非常に高い遺伝的リスクがある家系や、同じ病気で複数回妊娠中絶・流産を経験しているカップルでは、病気を持たない(またはリスクの低い)胚を選んで移植することで、将来の妊娠・出産に伴う負担を減らせる可能性があります。

PGT‑Aは、胚の染色体の本数(23対がそろっているかどうか)を調べ、トリソミーなどの異数性を検出する検査です。PGT‑Mは、家族内で特定されている単一遺伝子変異(例:嚢胞性線維症など)に焦点を当て、その変異を持たない胚を選ぶための検査です。PGT‑SRは、親のどちらかが持っているバランス型転座などの構造異常が、胚で不均衡(過不足)になっていないかを調べる検査です。

日本では、PGTは主に重い遺伝性疾患が家系にある場合や、明らかな染色体構造異常を持つ方、同じ遺伝性疾患や染色体異常により妊娠中絶を繰り返している方などに対して検討されます。適応は施設ごとの倫理委員会や学会指針に沿って判断されるため、「希望すれば誰でも受けられる検査」ではありません。具体的な適応は、遺伝カウンセリングで個別に検討されます。

ホルモン刺激の開始から採卵までは通常2週間前後、その後胚盤胞までの培養に5〜6日かかります。PGTの結果が出るまでにさらに数日〜1〜2週間程度必要なことが多いため、多くの施設では一度すべての胚を凍結し、結果が確認できてから別の周期で移植します。全体として、検査を含む1回の治療サイクルは1〜2か月程度をみておくと良いでしょう(事前の検査や準備期間を含めると、さらに長くなる場合もあります)。

PGTを行うと「必ず1回で妊娠できる」というわけではありません。年齢や卵子・精子の状態、不妊の原因によって、大まかに20〜30%前後の出生率/胚移植1回と考えられています。若い方ではこれより高い結果が期待できる一方、特に40歳を超えると、正常胚が一つも得られないサイクルも比較的多くなります。PGTは妊娠率を劇的に上げる「魔法の検査」というより、流産や不必要な移植を減らし、治療方針を現実的に考えるためのツールと捉えるのが近いかもしれません。

現在主流のトロフェクトダーム生検では、胚盤胞の外側から数個の細胞を取るだけで、胎児になる内細胞塊には手を加えません。大規模な追跡研究では、生検を行わない場合と比べて先天異常の頻度が明らかに増えるというデータは示されていません。ただし、理論的には着床率への影響など完全には否定できないため、実績のある施設で行うことが重要です。気になる場合は、担当医にその施設の成績を具体的に聞いてみましょう。

モザイク胚とは、同じ胚の中に正常な細胞と染色体異常を持つ細胞が混在している状態を指します。PGTで検査するのは胚のごく一部の細胞なので、その結果が胚全体をどこまで正確に反映しているか判断が難しくなる場合があります。モザイク胚を移植するかどうかは、どの染色体にどの程度の異常があるか、年齢やこれまでの治療歴などを踏まえ、チームで慎重に検討されます。

現時点では、niPGT‑Aは従来の生検ベースのPGT‑Aを完全に置き換える段階にはありません。培養液由来のDNAは、胚そのものとは異なる混ざり方をしている可能性があり、解析や解釈が難しいことが知られています。有望な技術ではありますが、日本を含む多くの国で「研究段階または補助的検査」と位置付けられており、標準治療としては慎重に扱われています。

施設や検査内容によって大きく変わりますが、1回の採卵から複数回の胚移植までを含めた「1サイクル」をトータルで見ると、PGTなしの体外受精より数十万円〜100万円以上費用が上乗せされることも珍しくありません。複数回のサイクルを視野に入れると、総額はさらに大きくなります。必ず事前にクリニックから詳細な見積書をもらい、自治体の助成金や高額療養費制度も含めて、自分たちの家計で無理のない範囲かどうかを検討することが大切です。

体外受精など不妊治療の一部は、公的医療保険の対象になりつつありますが、PGT単体については、2025年時点では原則として保険適用外と考えておいた方が現実的です。ただし、特定の研究事業や指定施設における試行的な枠組みなど、例外的な扱いが存在する可能性もあります。最新の状況は、必ず担当施設とご自身の加入している健康保険(協会けんぽ、組合健保など)に直接確認してください。

PGTは、適切な適応のもとであれば日本でも実施されていますが、単独の「PGT法」があるわけではなく、母体保護法や医療法、学会のガイドライン、施設ごとの倫理委員会など、複数の枠組みの中で運用されています。主な学会として日本産科婦人科学会(JSOG)が指針を出しており、厚生労働省や各自治体が、医療機関の安全性・適正性を監督しています。性選択など、社会的に受け入れがたい利用については、明確に禁止・制限されています。

PGT以外の選択肢としては、通常妊娠のうえで出生前診断を受ける方法、ドナー精子やドナー卵子を用いて病気の原因遺伝子を避ける方法、養子縁組や里親として子どもを迎える方法、あるいはあえて検査を行わないという選択が考えられます。それぞれ医療面・法制度・家族関係・価値観に大きく関わるため、遺伝カウンセリングと心理的支援を受けながら検討することをおすすめします。

良いクリニックを選ぶポイントとしては、PGTの実績と症例数、妊娠・出生率や合併症のデータを公開しているか、遺伝カウンセリングや心理的サポートが整っているか、費用の説明がわかりやすく透明であるかなどが挙げられます。海外の施設を検討する場合は、現地の法律・言葉・文化、帰国後のフォロー体制、トラブル時の対応も含めて慎重に確認しましょう。「何でもやってくれる」よりも、「できないこと・やるべきでないこともはっきり説明してくれる」施設ほど信頼できると言えます。