顕微授精(ICSI)は、重度男性不妊や受精障害例で選択される高度生殖医療です。本記事では、日本の最新ガイドに基づき、流れ・費用・成功率・リスク・他法との比較までわかりやすく解説します。
ICSIとは?
ICSI(Intracytoplasmic Sperm Injection)は、1個の精子を顕微操作で卵子の細胞質内に直接注入する方法です。精子の運動率・形態・数が極端に低い場合や、通常の体外受精(IVF)で受精しない場合に有効です。
ICSIの主な適応
- 重度男性不妊(精子濃度・運動率・形態異常)
- 精巣精子(TESE/micro-TESE)使用例
- 抗精子抗体・高DNA断片化
- IVFで受精障害があった場合
- 原因不明不妊・受精率低下例
ICSIの流れ(ステップ)
- 卵巣刺激: 約8~12日間、注射で複数卵胞を育てる
- 採卵: 麻酔下で卵子を採取
- 精子調整: 精液または精巣精子を選別・洗浄
- 顕微授精: 1個の精子を顕微操作で卵子に注入
- 胚培養: 3日目(8細胞期)または5日目(胚盤胞)まで培養
- 胚移植: 子宮に1個(SET)または2個の胚を戻す
- 黄体補充: プロゲステロン投与(約2週間)
- 妊娠判定: 移植後12~14日で血液検査(hCG)
費用・保険適用
日本のICSI1周期の費用は約45~70万円(薬剤・検査・採卵・培養・胚移植含む)。自治体助成や保険適用は施設・自治体ごとに異なります。精巣精子(TESE)は追加費用あり。
成功率(2024年データ)
- ~34歳: 45~55%/胚移植
- 35~37歳: 35~45%
- 38~40歳: 25~30%
- 41歳以上: 15%未満
受精率は70~80%/卵子。凍結胚移植を含めた累積妊娠率は60%以上(若年層)。
主要な受精方法の比較
リスク・副作用
- OHSS(卵巣過剰刺激症候群): 低用量刺激・GnRHトリガー・全胚凍結でリスク低減
- 多胎妊娠: SET(単一胚移植)でリスク減
- 長期的: 妊娠高血圧・早産リスクがやや上昇
- 精神的負担: 高ストレス。カウンセリング・自助グループ推奨
- 経済的負担: 自己負担・薬剤・PGT・追加移植費用
- 稀な遺伝・エピジェネティックリスク: インプリンティング症候群(絶対リスクは1%未満)
成功率アップのコツ
- BMI20~30、禁煙・節酒(週5杯未満)、葉酸・ビタミンD摂取
- 精子提出前2~4日禁欲
- 男性はCoQ10(300mg/日)、L-カルニチン(2g/日)で運動率改善(医師と相談)
- 適度な運動・ストレス管理・オメガ3摂取
最新技術・トレンド
- IMSI・PICSI: 精子選別技術で流産率低減(効果は限定的)
- PGT-A(着床前遺伝子検査): 35歳以上・流産反復例で流産率低減
- Gentle-ICSI: 低刺激+単一胚移植でOHSS・多胎・費用を抑制
- 凍結胚移植: 最新のガラス化法で新鮮胚移植と同等の妊娠率
まとめ
顕微授精(ICSI)は重度男性不妊や受精障害例で最も有効な治療法です。費用・リスク・精神的負担も正しく理解し、専門家と伴走しながら現実的な家族づくりを目指しましょう。