精子提供で注意すべき感染症・遺伝病 ― 日本語ガイド2025

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執筆:フィロメナ・マルクス2025年6月13日
精子検査を行うラボスタッフ

日本でも精子提供は年々増加していますが、感染症や遺伝病のリスク管理が不可欠です。現代のラボ検査でほぼ全ての主要ウイルス・細菌・遺伝子疾患をスクリーニングできます。本記事では、日本語で感染症・遺伝病・検査方法・安全対策を解説します。

なぜ多段階スクリーニングが必要?

感染症には「ウィンドウ期」があり、抗体検査だけでは初期感染を見逃すことがあります。日本産婦人科学会・WHOは抗体検査とPCR法の併用、精子の数ヶ月間の凍結保存(検疫)を推奨しています。

精液で検出される主なウイルス

  • HIV ― ELISA・PCRで検査、凍結保存後に再検査
  • B型・C型肝炎 ― 抗体・抗原検査
  • ヘルペスウイルス ― PCRで1型・2型を判定
  • サイトメガロウイルス(CMV) ― IgG/IgM検査、免疫低下者に注意
  • HTLV-I/II ― 白血病リスク、抗体検査
  • HPV ― ハイリスク型はPCRで判定
  • ジカウイルス・デング熱・西ナイルウイルス ― 渡航歴がある場合はPCR検査
  • SARS-CoV-2 ― 一時的にスクリーニング対象

精液に潜む細菌・寄生虫

  • クラミジア ― NAAT(核酸増幅法)で検査、不妊リスク
  • 淋菌 ― 尿・膣分泌物の培養・PCR
  • 梅毒 ― TPHA・RPR検査
  • 大腸菌・腸球菌 ― 培養で炎症リスク判定
  • トリコモナス ― 精子運動率低下
  • マイコプラズマ・ウレアプラズマ ― PCRで判定

主な遺伝病リスク

  • 嚢胞性線維症(CFTR遺伝子)
  • Tay-Sachs病(HEXA遺伝子)
  • 脊髄性筋萎縮症(SMN1遺伝子)
  • 鎌状赤血球症・サラセミア(ヘモグロビン解析)
  • 脆弱X症候群(FMR1遺伝子)
  • Y染色体微小欠失(重度男性不妊)
  • ゴーシェ病・ファンコニ貧血など民族特有疾患

どこまでリスクを除外できる?

抗体・PCR・遺伝子パネル・数ヶ月の凍結検疫により、主要な感染症・遺伝病はほぼ除外可能です。残存リスクは0.1%未満とされています。

スクリーニングの流れ(日本の例)

  1. 問診・健康調査 ― 既往歴・渡航歴・家族歴
  2. ラボ検査 ― 抗体・抗原・PCR・培養
  3. 遺伝子パネル ― 主要遺伝病のスクリーニング
  4. 凍結保存(検疫) ― 3~6ヶ月保存後に再検査
  5. 最終判定 ― 新規感染がないことを確認し提供

精子バンクと個人提供の違い

公的バンクは法令・学会ガイドラインに基づき、検査・検疫・登録を厳格に管理します。個人提供は検査・契約・法的リスクを自己管理する必要があり、十分な注意が必要です。

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まとめ

精子提供は家族づくりの大きな選択肢ですが、感染症・遺伝病のリスク管理が不可欠です。日本産婦人科学会・WHOの推奨に従い、信頼できる医療機関・バンク・プラットフォームを利用しましょう。

よくある質問(FAQ)

抗体・PCR検査、3~6ヶ月の凍結検疫、再検査で残存リスクは0.1%未満です。

HIV、B型・C型肝炎、梅毒、クラミジア、淋菌、CMV、HTLV、HPV、主要遺伝病パネルが標準です。

はい。採取直後と凍結後にELISA・PCRで検査します。

HBs抗原・抗体、HCV抗体などが必須です。

尿・膣分泌物のPCR検査(NAAT)で判定します。

嚢胞性線維症、脊髄性筋萎縮症、鎌状赤血球症、脆弱X症候群などが標準です。

ウィンドウ期の感染症を除外するため。3~6ヶ月保存後に再検査します。

日本では1回5万~15万円(検査・凍結・管理料含む)が目安です。

20~40歳、健康、感染症・遺伝病陰性、十分な精子数・運動率が必要です。

バンクに比べて検査・契約・法的リスクが高く、十分な注意が必要です。

日本では匿名が主流ですが、将来の情報開示権も議論されています。

PCRでハイリスク型を判定し、陽性は提供不可です。

ジカウイルス検査は必要ですか?

渡航歴がある場合はRT-PCRで検査し、感染リスクを除外します。

CMVは妊娠に影響しますか?

はい。CMV陽性精子は妊娠リスクがあるため、陰性ドナーが推奨されます。

精子提供の流れは?

問診→契約→検査→採取→凍結→再検査→提供→人工授精の流れです。

妊娠率はどれくらい?

1周期あたり15~20%、3周期で累積50%以上が目安です。

耐性菌は検出できますか?

培養で耐性菌を判定し、問題があれば提供不可となります。

凍結精子の保存期間は?

液体窒素(−196℃)で数十年品質を維持できます。

受け入れ年齢制限は?

多くの施設で45歳まで。高齢妊娠はリスクが高まります。

精子の質は妊娠率に影響しますか?

精子数・運動率が高いほど妊娠率も高くなります。提供前に必ず検査します。