日本でも精子提供は年々増加していますが、感染症や遺伝病のリスク管理が不可欠です。現代のラボ検査でほぼ全ての主要ウイルス・細菌・遺伝子疾患をスクリーニングできます。本記事では、日本語で感染症・遺伝病・検査方法・安全対策を解説します。
なぜ多段階スクリーニングが必要?
感染症には「ウィンドウ期」があり、抗体検査だけでは初期感染を見逃すことがあります。日本産婦人科学会・WHOは抗体検査とPCR法の併用、精子の数ヶ月間の凍結保存(検疫)を推奨しています。
精液で検出される主なウイルス
- HIV ― ELISA・PCRで検査、凍結保存後に再検査
- B型・C型肝炎 ― 抗体・抗原検査
- ヘルペスウイルス ― PCRで1型・2型を判定
- サイトメガロウイルス(CMV) ― IgG/IgM検査、免疫低下者に注意
- HTLV-I/II ― 白血病リスク、抗体検査
- HPV ― ハイリスク型はPCRで判定
- ジカウイルス・デング熱・西ナイルウイルス ― 渡航歴がある場合はPCR検査
- SARS-CoV-2 ― 一時的にスクリーニング対象
精液に潜む細菌・寄生虫
- クラミジア ― NAAT(核酸増幅法)で検査、不妊リスク
- 淋菌 ― 尿・膣分泌物の培養・PCR
- 梅毒 ― TPHA・RPR検査
- 大腸菌・腸球菌 ― 培養で炎症リスク判定
- トリコモナス ― 精子運動率低下
- マイコプラズマ・ウレアプラズマ ― PCRで判定
主な遺伝病リスク
- 嚢胞性線維症(CFTR遺伝子)
- Tay-Sachs病(HEXA遺伝子)
- 脊髄性筋萎縮症(SMN1遺伝子)
- 鎌状赤血球症・サラセミア(ヘモグロビン解析)
- 脆弱X症候群(FMR1遺伝子)
- Y染色体微小欠失(重度男性不妊)
- ゴーシェ病・ファンコニ貧血など民族特有疾患
どこまでリスクを除外できる?
抗体・PCR・遺伝子パネル・数ヶ月の凍結検疫により、主要な感染症・遺伝病はほぼ除外可能です。残存リスクは0.1%未満とされています。
スクリーニングの流れ(日本の例)
- 問診・健康調査 ― 既往歴・渡航歴・家族歴
- ラボ検査 ― 抗体・抗原・PCR・培養
- 遺伝子パネル ― 主要遺伝病のスクリーニング
- 凍結保存(検疫) ― 3~6ヶ月保存後に再検査
- 最終判定 ― 新規感染がないことを確認し提供
精子バンクと個人提供の違い
公的バンクは法令・学会ガイドラインに基づき、検査・検疫・登録を厳格に管理します。個人提供は検査・契約・法的リスクを自己管理する必要があり、十分な注意が必要です。

まとめ
精子提供は家族づくりの大きな選択肢ですが、感染症・遺伝病のリスク管理が不可欠です。日本産婦人科学会・WHOの推奨に従い、信頼できる医療機関・バンク・プラットフォームを利用しましょう。